久々の書評ですが、やっと書けます。
今回は田上孝一大先生の『疎外論入門』です。
疎外というのは「人間の本質が人間にとってよそよそしくなること」と定義され、疎外論といえばマルクスのイメージがあるが、
本書は疎外論の歴史をマルクス以前に遡り、またマルクスを超えてそれ以降の疎外論の展開まで記述されている。いわば疎外論史もしくは疎外概念の観念史と言っていいだろう。
マルクス解釈には疎外論の他方で、物象化論を取るという立場があるが、それを避けずにルカーチの物象化論を代表に取り上げて、物象化論を批判する。その手つきは非常に明快であり、虚心坦懐なマルクス読解に基づく批判が展開されているので非常に納得ができた。欲を言えば、廣松の物象化論批判もやってほしかったが、そちらについては以下の論文を読めば十分であろう。
私個人の関心としては、疎外が人間の本質からよそよそしくなることということに関連して、人生の意味と疎外について考えたいところであるが、これも田上先生の書籍を読むことで感化されて誰かがやってくれるのではないだろうか。
ともかく、疎外は資本主義社会の問題であり、客観的なよそよそしさである限りにおいて、個人で回復できるものではなく、社会の革命という飛躍の末にようやく回復が実現されるものだろう。社会主義を理念としてもち、資本主義のもたらす現実に目覚めさせられる、そんな読書体験であった。
