大学のとある哲学サークルの出来事

私が大学在学中にはなかったのだが、後輩世代で大学に哲学サークルができたらしいので後輩から聞いた話を記していこう。

 

その哲学サークルでは、単に哲学的な議論をするだけではなく、哲学書を持ちよって自分の好きな哲学者について部員同士で語りあうことがしばしばだったらしい。

やっぱりカントが最高だとか、いやいや人生の意味について考えるサルトル実存主義は無視できないとか、なにを言うか、お前にはデリダ脱構築の良さが分からないのかなどなど、そういった類いの会話が交わされていたらしい。

その頃はとにかく自分の哲学的センスを誇示するのにみんな一生懸命で、果たして本気でそれが良いと思っているのか、それとも単に逆張りをしているのか、本人たちにも分からないほどだったという。

 

しかしあるとき、新入生に先輩たちが「どんな哲学思潮が好きなのか?好きな哲学者は誰か?」と吹っかけたところ、その新入生は「あまり哲学は読みません」と答えた。

先輩部員たちはその回答に驚くと同時に、それがこの手の質問に対する最強のカードだと察したようで、以後は皆が口を揃えて「俺、あんまり哲学を読まないから」と言うようになったらしい。

そのほかにも、そのサークルでは哲学的議論を交わすような場面もあり、それぞれが哲学語りをするほか、人生の悩みを打ち明けるなどしていたようだ。そこで、ある人が「俺たちは頭が良くて繊細だから他の人より悩みがつきない」と言っていて、それにカチンときた部員が「哲学以外の人でも悩みはあるんじゃないですか?」と返すと、「君には悩みがなさそうだし俺たちの苦悩はわからないんだね」と言ったそうだ。

 

研究者レベルでこういう人はいないと思うが、大学生の哲学サークルレベルになるとちょっと選民思想にかぶれた学生たちが運営していることがあるようだ。

 

まっとうに哲学をやりたかったらとりあえず哲学教授の研究室の門を叩いて授業に出させてもらったり、あるいはある程度哲学の基本教科書を読むなりして研鑽したほうがいいだろう。