地獄の大学院生活ー実態と展望ー

大学院生活のつらさについて綴っていこうと思う。リクエストがあったからだ。

ただしあくまで文系、特に人文系の話だ。

 

大学院と言っても修士課程ぐらいならまだ余裕である。たった40000字程度の修士論文を書くまでの間、2年間も猶予がある。

教員の関わり方は研究室によりけりだが、博士課程やポスドクの先輩はまだひよこっこの修士課程には優しい(たまに嫌味なやつもいるけどそれはただの嫌なやつだから放っておいてOK)

修士課程で抜ける気ならさっさと就活して研究室から距離を置けばいい。大学院に行くと就活に不利になるという風説もあるが実際は学部と大差ない。大学院に進んだ積極的な理由とかそこで身についたスキルをうまく言えれば切り抜けられる。学会や研究会で発表経験があればプレゼン力は多少上がっているはずだ。

 

さて、前置きが長かったようだが、大学院博士課程に進学するとなると話は別だ。

まずM1の終わりぐらいから学振=日本学術振興会特別研究員DC1の書類を書くところから博士課程における競争が始まると言っても過言ではない。3年間月20万(しかし諸々引かれるので実質手取り16万程度)の生活が保障される。まずその最低限の生活、しかし世の中の新卒サラリーマンよりも悪条件での生活が保障されるようにしないといけない。

 

とはいえ、学振が受からなくても博士に進学することは可能だ。当然自腹である。ごく稀に研究にリソースを全面的に費やしたいから学振書類など書く時間は取らないという猛者もいる。研究に尽くすのは結構だが、しかし研究者としてやっていくことを考えると、学振はいわば科研費取得の準備段階だからあまりオススメしない。

 

まあしかし私は学振に一度も通らずに博士課程に進学した男だ。経済的には基本的に親に頼ったのと、終始卒業後1年間フリーターをやり金を貯めたぐらいだ。それでも心許ない。

 

幸いなのは出身大学のTAの給料がまあまあよかったことだ。これはウチだけの特徴だが、TAの給料は院生への奨学金みたいな位置付けであった。

 

さて、人文系博士課程の生活実態について話していくと、まず研究室に行っても誰もいないのが基本。他の大学ではそんなことはないのかもしれないが、ウチはそうだった。だから一人で黙々と誰とも話さずにただひたすら研究に打ち込むのみであった。

 

孤独耐性のひじょうに高い僕みたいな人間なら十分耐えられる環境で、また誰も来ないから好きに音楽流したりとかしながら研究していたので天国だった。

 

しかも2年目にはゆくゆくは彼女になる人が同じ部屋に配属され、2人しかいないことが多かったので2人だけの世界になっていった。

 

彼女は僕の存在を落ち着く人だと言ってくれた。彼女はとても優しい人だった。留学経験があったからか英語も堪能で、僕も英会話の練習の一環で英語で喋ったりしていた。

 

孤独もいいが、気を許せる人と一緒に研究できるというのはなんと幸せか。

 

といった惚気話をしていてもしょうがないので本題に戻ると3年目あたりからいよいよ経済的に苦しくなってきた。非常勤講師でもやれれば少しは助かったんだろうが、大変残念なことに指導教授には紹介できる人脈がない。僕も環境にかまけて人脈を広げるということをしなかったため、非常勤講師を紹介してくれるアテもなかった。

 

非常勤講師と言ってももらえるのは雀の涙。やったことはないので相場がいくらかは知らないが、ガキの小遣い程度だという。大体予想では6〜7くらい掛け持ちしてようやく生活が成り立つ程度ではなかろうか。

 

もちろん紹介だけでなく公募の非常勤講師というのもあるのだが、大体条件欄に教歴のある人とある。非常勤講師をこれまでにやったことがないと非常勤講師にすらなれない現状。やはり紹介に頼らなければ未来はない。

 

僕の場合、友人にオススメされて自治体、市役所などが登録している会計年度任用職員というものがあることを知った。僕は急いで近隣の3つの市の会計年度任用職員に登録した。

 

なかなか仕事が来ないと思っていたらちょうど選挙があった時期、選挙のバイトに勧誘された。すぐさまと思い選挙のバイトをしたのだった。

大体いたのは主婦の方ばかりで小遣い稼ぎ程度で来ている感じだったが僕は生活のために必死である。

 

正直なところ、今博士課程に進学するにあたって、学振がなければ、否、学振があってさえも経済的に無防備な状態で行くのは厳しいのではないかと思う。

一度就職して、仕事に慣れてから社会人博士になるというのも手だ。

僕の前に書いた人文系博士課程就活ブログで書いたように、僕も最終的には社会人博士になった。

 

それに研究者になるのも今後厳しいだろう。当然やりたいこととは関係なく一心不乱にいま流行りのテーマでなんとか生き残ろうという生存戦略はあるが、その辺の分野を見ていても過当競争で一発当てていくのは至難の業であろう。しかも最近分かったことだがその辺の分野に携わっている者同士が仲良く和気藹々とやっているわけではなく、血肉を争う戦いのようにギスギスしている感じがする。

 

社会人をやっていても研究はできる。

しかも逃げ道があるから好きな研究を気兼ねなくできる。

対価をもらってないのだから研究に口出される筋合いもない。

 

少子化になる一方、学生からストレートに博士人材を作っていくのは悪手だろう。絶対数が減るのだから。

 

社会と関わりながら研究をやる人が増えていくそんな社会が来ればいいと思う。