仕事をしながら博士号を取ること

2020年夏

彼女が亡くなり

僕は大変悲しんだ

就職したら結婚するつもりでいたから

人生の意味を一つ失ってしまった感じだった

 

それでも彼女がきっかけで就活しようと決めたのだから

内定先の企業でともかくも働くしかないと強く決意した

 

そして就業が始まった

最初は単純作業で索引とか文献まとめたりして

それから校正や督促など徐々に編集者らしい仕事も任されるようになった

 

出版社編集者の仕事は徐々に覚えつつも

問題は博士論文である

 

博士課程在学中に就職する人は

途中でドロップアウトするパターンもよく見られるので

僕もそうなるかと思ってたけど

博士論文は書いて博士号は取っておきたいと思った

 

だからこれから半年間

就労しながら博士論文を書くという日々が始まったのである

 

とは言っても博士論文の骨子は書けていたので

(というか就活が決まらない鬱憤で博論を書くことでセラピーとしていたわけだが)

あとは肉付けするなり何なりして

完成させるフェーズに入ってはいたのである

 

生活リズムとしてはこうである。

就業が9時5時なので

早朝に起きて7時くらいに職場近くのマクドナルドで関連論文を読む

仕事をし終え、帰ったあと、

8時から10時くらいまで博論執筆の時間に充てる

というリズムだ

 

これもコツコツ続けていたら何とかなるだろう

そのコツコツ続けるのが実際には難しいのだが

そこはそんなこと言ってられない

 

働いてなくても博士論文を書くというのは

それ相応の覚悟というか何か大きなものを失う覚悟で書かなければならない

以上のペースを続けることなんて大したことはない

自分に甘えなければできる

 

そして中間審査だ

審査では内容はいいが展望が足りないとか結論部が薄すぎるとか言われた

 

なので仕方なく最終審査までのほんの2ヶ月間だが

必死こいて膨らませることをがんばった

幸い2020~2021年冬はコロナがさらに拡大していた時期で

在宅勤務も取れたので

在宅の仕事はさっさと終わらせて

執筆作業に向かっていた

何より通勤時間=電車に乗る時間がないというのが大きかった

 

そんなこんなで2021年春

博士論文を提出した

審査も無事こなし博士号を取得したのである

 

しかし僕のキャパシティではこんな生活半年か一年しかできない

社会人博士という選択も世の中にあってもいいとは思うのだが

生半可な覚悟ではできないだろう

 

でもやってやれないことはない

産学連携というのだから

企業もその辺に理解があって

大学も社会人に対して適切に指導できるようになれば

うまくいくのではないだろうか

 

特に少子化でこれから博士課程に進学する絶対数が

下がっていく中で

社会人博士課程というのは実現させないと

なかなか厳しいものがあると思う

 

まあ僕みたいなケースがちょっとでも参考になってくれれば幸いだが

社会が良くなっていく方向になればいいと思う