2020年春先
就活も悪い意味でひと段落し
世の中も自粛ムードが漂っていたため
僕も自宅に引き篭もる生活をしていた
もはや民間就職は諦め
転職サイトを確認することもなく
文筆活動を始めていた
あと翻訳もだ
もうこの辺で食っていくしかなかろうと思い
毎日毎日読書漬けの生活
この生活が性に合っているなと思えた
しかし金は無いしつらかった
給付金はもらえたが
なかなか何ヶ月も生活できるような額ではない
非常勤講師も見つからないし
紹介してくれる人もいない
そんな中
忘れた頃に転職サイトをのぞいたら
書類選考に通ったみたいなメールが来ていた
どうやら出版社のようだ
そういえば就活打ち止めの時に
片っ端から出した中に入ってたのかと思って
まあとりあえず見てみることにはしたが
どうやら編集職の募集
書籍編集者は就活初期の頃に応募してはいたが
書類で弾かれることが多く
それを大学の就職課に来ていたハローワーク職員に報告したら
そんな学部生みたいな就活の仕方はやめろと怒られたのだった
なのでまあダメ元で面接を受けてみることにした
学術系の出版社で
まあもはや就職しようとすら思ってなかった頃なので
せめて執筆者として顔を売って執筆の仕事でももらおうかと
過去に書いた論文の抜き刷りを鞄に潜めて向かったのだった(結局渡せなかったが)
面接は編集職の管理職クラスっぽい社員の人たちが色々聞いてきたが
ハッタリで色々答えて終わった
まあこれで終わりだろうと思ったが
なんと面接に通過し役員面接に呼ばれたのであった
とはいえ過去に役員面接で落とされた経験もあり
自信もありつつも後ろ暗さもあった
とりあえず行ってみる
質問はまあやる気と条件の確認みたいな感じで
終わった
返答は早かった
なんとここで初めて内定したのである
内定した時の返事の速さたるや
まあなんということ
早速彼女に連絡し
一緒に喜んだ
まだ給料ももらってるわけでもないのに
どこに住もうかとかそういう相談をしていた
そして会社に出すべき書類を提出し
就業開始まで待っていた
その年の夏
彼女は死んだ